任意整理
法的な手続によらずに、各債権者と交渉して債権の返済を延長してもらったり、債権を放棄してもらう手続です。
法的整理とは異なり、各債権者に応じた柔軟な対応が可能ですが、裁判所の監督が無く、債権者に対する強制力が無いため、反対する債権者がいた場合には手続ができなくなります。主には、会社再建のために行う手続ですが、破産手続の手間を省く精算のために行う場合もあります。
任意整理のメリットとデメリット
任意整理を行うと、各債権者への支払いを一時停止した上で、債務の整理ができます。 他の手続と比較して、経営権は完全に経営者に残ること、整理する債権者を選べることが大きなメリットです。すなわち、銀行との信用関係が大切であると考えれば銀行の借り入れを整理せず、一般債権者との交渉もできます。 一方、買掛金の仕入れ先など信用を失いたくない場合には、その債権者を除いて整理することもできるのです。 さらには、交渉する相手ごとに差別的な扱いができます。例えば、A社には一括全額で払う、B社は60回分割、C社は30回分割、といった交渉もできます。 このように、任意整理は柔軟な解決が可能なのです。 |
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もちろん、柔軟な解決が可能というのは、逆を言えば各債権者との個別の合意が必要になってくることになります。 各債権者の中に、和解案に合意しない者がいる場合には、個別に調停をおこなったり、話し合いを継続したりという手段がありますが、100%有効というわけではありません。 |
任意整理の流れ
弁護士は依頼を受けると、まず、整理するべき相手、すなわち債権のリスケジュールをすべき相手方に対して支払停止の通知を出します。
それでも取り立て行為を行ってくる相手方には、弁護士が警告文を出すなどして対応します。調停を申し立てることもあります。
支払を一旦停止させることで、会社の資金繰りが楽になります。
催促・取立ての停止
通知書発送から1週間~3ヶ月くらいを目処に、通知の相手方に対して弁済案を提案します。この弁済案は、依頼者の会社の実情に応じた金額になります。
弁済案としては、
- 金額の減額を求めるもの
- 金額の分割支払を求めるもの、という2点になります。
また、1、2などを認めるかわりに、公正証書や保証人を立てる場合もあります。
全ての相手方との和解が終了すると、手続きが終了になります。
各債権者に対して、代理人と相手方の間で約束した支払いを継続することになります。
法的整理
裁判所を通して、各債権者に対する債権の減額をする手続です。
法的整理には、「民事再生」「会社更生」「破産」の種類があります。
(1)民事再生
民事再生手続とは、主に経営難に陥った会社が、経営権を維持したまま債権額のカットやリスケジュールを行ってもらい、事業を継続するといった再建型の手続です。
経営権が維持できるというところに大きな魅力がありますが、その分債権者の冷たい視線にさらされます。
なお、個人でも同様の手続きを行うことができます。
民事再生のメリットとデメリット
民事再生は、現在の経営陣に経営権を残しつつ再建するための手続きです。経営者の心理として、経営権を手放したくないのが通常だからです。 法人が民事再生をすることのデメリットはほとんどありません。 あるとしたら、成功率が低いということです。 民事再生の場合、経営権が残るということは、逆に債権者の理解が得にくいということでもあります。再生計画案は、履行可能性があり、かつ債権者の過半数の同意を得る必要があることから、債権者の同意が得られるかどうかが勝負になってきます。 |
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予納金が高額となります。 |
民事再生の流れ
破産の場合と同様に、会社の財務状況、債務の金額について調査します。
場合によっては、現在の債権者への一旦支払を停止することもあります。
財務状況・債権調査が完了したら、裁判所に民事再生の申し立てを行います。再生申し立てを行い、開始決定が出れば、訴訟手続等は停止されます。
民事再生申立がされると、監督人が選任されます。
その上で、債権額について届け出と検査がなされます。
再生債権額を確定させる作業です。
再生債権額が確定すると、申立人代理人が再生計画案を作成します。
債権額のカット率、返済回数、再建の見込み等について記載した、再生計画案を作成します。
再生計画案が債権者に受け入れられれば、再生計画案が認可されます。
債権者に受け入れられるというのみならず、実現可能性がある計画案を作成することが重要になります。
認可の決定がなされ、特段の異議がなければ、再生計画は確定し、権利変更の効果が発生します。すなわち、債権額のカットが確定するのである。
(2)会社更生
民事再生と同様ですが、異なる部分は、原則として会社の経営権は管財人に引き継がれることになるというところです。
また、担保権の実行も再建手続内でのものとなるため、再建に対する期待は高いですが、処理期間が長くなる傾向にあります。会社は完全に別物になりますが、会社の行っている事業を継続させることができるので、従業員、債権者への影響を小さくすることができます。
会社更生のメリットとデメリット
なんと言っても会社を残すことができるという点です。もちろん、リストラ等は行うことになるでしょうが、それまで築いてきた営業資産や従業員を一部存続させることができます。また、民事再生手続と異なり、担保物件について別除権を認めません。 すなわち、民事再生においては抵当権等を実行されて結果的に運営がうまくいかない場合もありますが、会社更生の手続であればその心配もありません。 |
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通常会社更生を行う場合にはその会社がJALのような会社名を残す価値のある有名会社を除いて、スポンサーに売却する場合が多くなります。 |
(3)破産
会社に残った財産を整理し、各債権者に平等に分配し、その後会社を解散させる精算型の手続きです。
会社の行っている事業活動の継続を断念することになります。
破産のメリットとデメリット
個人と異なり、法人は破産によって再出発するわけではなく、解散することになります。そのため、代表者らが法人の破産を行う動機としては、主に事業に区切りをつけるために、ということになります。 もっとも、法人の破産の場合は、やむを得ずに行う場合も多くあります。 |
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法人破産を行うデメリットは特に考えられません。 個人破産と異なり、何ら代表者の権限が制限されることもないからです。 代表者と一緒に個人破産する場合には、代表者について個人破産と同様のデメリットがかかってくることになります。 |
破産の流れ
法人の場合、個人の破産と異なり債権調査の必要性が低く、逆に資産保全の必要性が高いのが通常です。これは、法人の財産は散逸しやすいこと、法人の債務額は帳簿等により把握できるケースが多いことからです。
このため、受任通知については発送しない場合もあります。発送によって、債権者をいきりたたせ、取り立て行為を招くからです。
法人の資産を売却・処分します。
ただし、配当が期待できるうような大きな法人の破産の場合は、申し立て代理人が処分せず、保全したまま管財人の処分に任せることになります。
優先債権や公租公課など、結局配当に際して優先的に支払わなければならないものを支払っておきます。
書類がそろい次第、申し立てをすることになります。
申し立てが終了すると、管財人が選任されます。
管財人が資産を調査し、資産があれば配当の手続に、資産が無ければ異時廃止となり、終了します。
法人の債務整理にかかる費用
任意整理 | 52,500円(相手方1人あるいは1法人につき) ただし、会社の内部整理等を行う場合、債権額に争いがある場合、精算等を行う場合には、別途30万円程度いただく場合があります。 |
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法的整理 | 法人の自己破産 300,000円~ 法人の民事再生 1,000,000円~ 法人の会社更正 1,000,000円~ いずれも予納金・実費が別途かかります。 また、上記の金額は目安であり、法人の規模、業務の内容、債権者数によって追加で金額をいただきます。詳細はご相談ください。 |